恋愛五十音のお題 色々なNLオンリーで攻略中

ま 魔物


 

コレクションルームには白はもちろん、黒い翼も飾ってある。
どれも厳選した物なだけあって、この部屋に来るたびにユーニはリラックスする。
だが最近の獲物は下手したらこれ以上の価値があるかもしれない。


レイジの傍にずっとついているサファエルを、ヴィディアは面白くなさそうに睨みつけている。
「おい、嫌でも仲良くしろよ?仮にも上司のお気に入りなんだから」
ギルヴァイスはそう窘めるが、彼もサファエルをよく思っていないのは表情で解る。
ヴィディアだってそんな事は承知だ。
ジーナアローズならともかく、あんなぽっと出の天使にレイジを取られているのが二人にとっては面白くないのだ。
「……二人ともお子様だね。ボクは大歓迎だけど?」
ユーニに『お子様』などとは言われたくない、そう二人は思ったが、相手が相手なので口には出さない。
「天使の白くてフワフワしてて、柔らかい羽っていいよね?」
同意を求めるが、翼の良さなど微塵も興味のない二人はただ機械的に首を縦に振るだけだ。
「特にあのサファエルって天使の翼……レイジが止めなきゃとっくにボクのコレクションになってたのに。キミたちのせいでもあるんだよ?」
「申し訳ございません。しかし我々はジェネラルの配下でして……」
ギルヴァイスが怯えながらそう言った。
サファエルを仲間に加えたのはレイジの判断だ。
だから自分たちが巻き込まれる必要はない。
「御託はいいんだよ。ボク、直談判してくる!」
そう言ってレイジとサファエルの元へ飛んでいくユーニの背中を見つめながら、二人はそっと胸を撫で下ろした。


「レイジ!」
ユーニは勢いがつきすぎてレイジにぶつかりそうになる。
サファエルと天界の話をしていていい気分だったレイジは若干気分を害した。
「どうしたユーニ。何か用か?」
「レイジじゃなくて、そっちの天使に。悪いけど席を外してくれる?」
いきなり会話に割り込んできておいて、籍を外せとまで図々しく言うユーニには腹が立ったが、怒らせると後が怖い。
我ながら情けないと思ったが、命は大事だ。
「……そうか。言っておくが、サファエルには手出しするなよ?」
「うん!」
釘を刺すが、ユーニ相手では効果はあまり期待できない。
サファエルは不安そうにレイジを見たが、彼はユーニから離れようと必死で、彼女の視線に気づかなかった。
ユーニは素早くサファエルに向き直ると、ストレートに言った。
「翼ちょうだい?」
「嫌です」
即会話終了。
遠巻きに見ていたレイジとヴィディア、ギルヴァイスはハラハラしながら成り行きを見守っている。
「じゃあ、付き合って?」
「付き合う?」
ポンポン進む二人の会話。
それもごく短い。
「身体つきでいいからその翼が欲しいの!」
頭の回転が遅い、と暗に非難するようにユーニはムキになって言った。
サファエルはたっぷり悩んだ挙句、暴力も残虐行為もなし、という条件でこの交渉を飲んだ。


ユーニと付き合い始めて、色々解ったことがある。
意外と純粋で、子供らしい。
特に寝顔は天使のように愛らしい(悪魔だけど)。
新しく弟が出来た気分で、これはこれで悪くないと思っていた。
しかし物事にはいつか終わりが来るものだ。
いつものように膝枕ならぬ≪羽根枕をしてやっていると、ユーニの指先がピクピクと動いて、羽根を数枚毟り取った。
「ひいっ!」
寝ぼけているのかと彼の方を見ると、しっかり両の目が開いている。
「……やっぱり身体つきはダメだね。邪魔だ」
混乱するサファエルに容赦なく襲い掛かるユーニ。
その場にいたレイジがあいっだに入ってくれたが、もう金輪際、フェザサイド・ユーニには関わりたくない。
総身を持って実感したサファエルだった。





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2015年 2月27日 莊野りず

『魔物』と言えばユーニでしょう!ちょうど最近全然書いていなかったので、この機会にクローズアップ。
サファエルには恋愛感情は抱いていないと思う(そもそも恋愛感情とかなさそう)けど、無理やりくっつけてみました。
結果は案の定ですが。ユーニが恋するのは翼でファイナルアンサー(笑)。 





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