素直になれない10のお題 カズリン(リン→カズイ)で攻略

7、あまのじゃく


カズイにはどうしても素直になれない。
 自分は割と素直な方だと思っていたのに。


カズイのところにトモユキや他の仲間が集まっている。
 「カズイ、お前さぞかしモテるんじゃね?」
 「女とかいないのかよ!」
カズイは曖昧な笑みを浮かべている。
 内心では仲間が羨ましかった。
でも口をついて出たのは。
 「お前ら!カズイなんかに構うな。報復に参加しないやつなんかに」
 思ったよりきつくなってしまった。
 本当はこんな事が言いたいわけじゃない。
ただカズイともっと親しくなれたら。
 「リンきっついなー」
 「でもまあ、そうだよな」
 「なんでお前参加しないんだよ。楽しいぜ!」
カズイは相変わらず微笑んだままだ。
その顔になぜかイライラして、リンはまた声を張り上げた。


 報復から戻ると、リンは真っ直ぐ自分の使っている部屋に戻った。
いつもは打ち上げと称して飲むのだが、今日は疲れてそれどころじゃない。
 部屋のドアの前でカズイに会った。
 相変わらず報復に関してはあまり快く思ってはいないらしい。
 「そんなに疲れるまでやるのか?」
カズイはリンの頬についた血を拭った。
その眼は静かに責めていた。
 「俺達の信条だろ?『やられたら倍にしてやり返す』」
 「……いつも誰もやられないじゃないか」
 「うるさい。寝るから」
それだけ言って部屋のドアを乱暴に閉めた。
ベッドに入るとカズイの一言が聞こえてきた。
 「身体を冷やすなよ」


その翌日もその次の日も、リンたちは報復を行った。
そのたびにカズイはリンの事を心配そうに見つめていた。
 「そんなに心配なら一緒に来いよ」
トモユキはそう言うが、カズイもここは譲れないらしい。
リンはカズイの心配そうな視線から逃れたくて心にもない事を言ってしまった。
 「トモユキ、放っとけよ。ただ臆病なだけだろ」
これには温厚なカズイも癇に障ったらしい。
 「リン、いつまでもそんな事でいいのか?お前はもう子供じゃないだろ」
 散々子供扱いをするくせにこんな事を言われて黙っていられない。
 「お前こそ子供だろ。暴力を楽しめないなんて。そんなならペスカ・コシカ止めちまえよ」
そこまで言ってしまってはっとした。
 「解った。俺はリンが心配だから口出ししてきたが、そんな言い方するならやめる」
この時ほどリンは自分のあまのじゃくを後悔した事はない。
 結局必死になって引き止めたリンだった。

 ___________________________________
 2013年 1月6日 荘野りず

 トシマでのリンは過去のことを後悔して素直になった結果だと思います。
 回想だとリンはぶっきらぼうで今より危うい感じがするし。



inserted by FC2 system