家族に対する10のお題 シキリンで攻略

6、ハッピーバースディ


大きな屋敷に広い庭。
 両親は誰がどう見ても美男美女。
 今日は弟の誕生日。


 大きなテーブルの上には所狭しとリンの好物が並んでいる。
その中心には大きな誕生日ケーキ。
シキは仕事を休んで、椅子に座っていた。
 今日の主役であるリンの姿はそこにはなかった。
 昨日は夜更かししすぎてまだ起きてこないのだ。
 隣の部屋で眠っているシキは夜遅くまで部屋に明かりがついていたことを知っている。
 早く寝ろと言ったのに――苦々しい思いで黙り込んでいると、リンの母親が遠慮がちに言った。
 「ごめんなさいシキ君。あの子の事、起こしてきてくれない?あなたの事大好きみたいだから」
 「……」
いつも忙しくて満足するまで構ってやれない。
だから今日くらいは優しくしてやろう。
そう思って二階への階段を上った。


 「リン」
ドアを開けるとリンは規則正しい寝息を立てて眠っていた。
 「リン!」
もう一度、今度は低めの声を出してリンの身体を揺さぶる。
それでもリンは起きない。
 仕方がないので布団を体から剥がす。
 今日で確か十歳になる弟はまだ小さい。
 最終手段とばかりに耳朶を軽く噛む。
 「……ん?」
やっと意識が覚醒してきたらしい。
くすぐったそうに身体を揺らす。
 「……目が覚めたか」
リンは目をパッチリと開けるとシキを凝視した。
 「お兄ちゃん?なんで?今日は仕事なんじゃないの?」
 誕生日の事は忘れたようにシキに問う。
 「お前の誕生日だろう?休んだ」
 事も無げに言うと、リンは顔を綻ばせた。
 「……ホント?嬉しい!」
 勢いよくシキに抱きつく。
 「ねぇ、ぎゅって抱きしめて」
 上目遣いでリンが強請る。
 最近は仕事に追われていて、弟と話すのも久しぶりだ。
 「仕方のない奴だ」
そうは言っても、こうして穏やかな気分になるのも悪くはない。
リンを力いっぱい抱きしめる。
 弟は嬉しそうに目を細める。
 「……ハッピーバースデイ」
そう言って瞼にキスする。
リンはにっこりと笑ってシキに顔を寄せる。
 「うん、有難う」
 頬に寄せられた唇からちゅっと音がして、頬にキスされたのだと解る。
まだ幼い弟が愛らしいと改めて思った。


――これからはもう少しこの弟のために時間を作ろう。
シキはそう思った。
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 2012年 7月8日 荘野りず

甘めのシキリン。
せめて誕生日くらいはリンに優しくしてやって、とか思いながら書いたもの。
シキは既にnに遇っていると思うけど実家にいるときくらいは穏やかな時間をすごして欲しいところです



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