愛のシチュエーション10のお題 カップリング色々で攻略

2、肝試し(トモユキ→リン→カズイ)


「今日はみんなで肝試しでもしようと思う」
いろんな声があった。
ばかばかしい、ガキっぽいから嫌だ、ホントは怖い、など。
そんな反対意見を一括したのはリンだった。
カズイの案ならなんでも賛成する彼はチームの仲間の頭である。
リンに対して強くいえないものたちは結局参加する事になった。
やはりリンはカズイには甘い。
そして集まった面々の中でも本気で怖がっている者がいた。
トモユキである。
 普段悪ぶっている彼は素直に嫌とは言えず、参加する事になってしまった。
――こんな事なら本当の事を言っておくんだった。
 後悔してももう遅かった。
でも一つだけいい事があった。
リンとペアなのだ。
それだけを心の支えにトモユキはカズイの用意したお化け屋敷もどきに入っていった。


 肩に冷たい手が乗ってきた。
 「ぎゃあああ!」
 思わず声が出る。
 今度は前からこんにゃくが顔めがけて飛んでくる。
リンは無言でそれを払いのける。
そして醒めた目で言った。
 「お前、こんなのが怖いわけ?」
 「でもよ、背筋がぞっとしねえ?全身の産毛がぶわっと!……ねえか」
トモユキは先ほどの不快感を再現して振るえた。
そんなトモユキをリンは冷たい目で見ている。
 「前から思ってたけど、なんで肝試しにこんにゃくなんだよ。怖くもなんともねーよ」
カズイがいないので言いたい放題だ。
これがカズイの発案でなかったら既にやめているところだろう。
だがそれではトモユキが困る。
 子供の頃はお化けを本気で信じていて、いつ襲い掛かってくるかビクビクしながら寝ていたものだ。
もどきとはいえ、怖いものは怖い。
 前を歩くリンの腕を掴みながら必死で進む。
 「……手、離せよ」
リンの低い声。
これは本気でいらついている時のリンの癖だ。
ある程度付き合いの長いトモユキはよく知っている。
さらに前から黒い全身タイツに身を包み、蛍光塗料を塗った仮面をつけた男達が斧らしき物体を持って現れた。
 「ふぅん……俺に勝てるって思うんだ?」
リンは腰に下げたスティレットを構えた。
 「おいリン!やるのか?」
へっぴり腰になりながら、トモユキはリンに訊いた。
リンは好戦的に笑っている。
 「やっぱりカズイだね。ちゃんと腕がなまらない工夫をしてるなんて」
 相手の男は聞いてないとばかりに焦り始めた。
それはそうだろう、まさかたかが肝試しで怪我を負わされることになるとは普通思わない。
 「つまらないし、トモユキはヘタレだしでイライラしてたんだよ。これですっきりできる」
リンは男の方にスティレットを向けて地を蹴った。
 相変わらず速い。
 「カズイは褒めてくれるかな」
リンは楽しげに相手をいたぶった。
トモユキはお化けよりもリンの方がよっぽど怖いと思った。


 「あのなあ、普通はやらないんだ」
 肝試しのゴールでリンはカズイに叱られた。
それはそうだろう。
あの男が持っていたのは偽者の斧で、ただ脅かすのが目的だったのだ。
それをリンはよりにもよってボコボコにしてしまったのだ。
カズイが怒るのも納得だ。
トモユキでさえあの男がただの脅し要員だという事くらいわかる。
するとリンはしゅんとして謝った。
 「解かったんならいいけど」
その言葉を聴いた途端、リンは頭を下げたままにやりと笑った。
 甘いのはリンだけではなくカズイもだ。
こんな二人に振り回された自分が馬鹿みたいだとトモユキは沈むのだった。
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 2013年 月日 荘野りず

最初はトモリンにするつもりが、いつの間にかトモユキ→リン→カズイになっていたもの。
 普通に勧めるとリンの性格からして大人リンでないと馬鹿馬鹿しいとか言ってやんなそうだったのでカズイに登場してもらいました。
トモユキはお化け怖い方が面白いと思って怖がりにしてみました。



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