愛のシチュエーション10のお題 カップリング色々で攻略

6、密会(トモリン)


「あいつ何やってんだ?」
リンは誰に言うでもなく呟いた。
 今日は久しぶりにアイツに会う日だ。
 時間通りに来たのに、約束の時間からもう十五分も遅刻している。
 「せっかくこの俺が会ってやるってのに……アイツのくせに百年早いんだよ」
だがどこか楽しみなのも事実だ。


 「悪い、遅くなった」
 少しも悪いと思っていない軽薄な顔に苛立ちが募る。
 「遅いんだよトモユキのくせに生意気」
 長めの緑のジャケットにベージュのパンツを合わせたリンは昔よりはるかに柔らかい表情になった。
カズイの事に触れるとすぐに怒り出していた時のリンはどこか危うかったが、今のリンにはそんな気配はない。
 「カズイの事、吹っ切ったのか?」
 怒るかと思った話題でも悲しそうな顔をするだけで以前のような激しさはない。
これもあのアキラとかいう男のおかげなのかもしれない。
それが気に食わない。
 「吹っ切ったっていうか、過去の思い出として大切には思ってる」
 口調も柔らかくなった。
 「あ、お前のおかげじゃないからな?」
よく笑うようにもなった。
そういえばトシマではシキに執着していたが、今はどうなのだろう。
 「……シキの事は?お前アイツにいつもこだわっていたじゃないか。アイツは?」
リンは複雑そうな顔をしている。
 話すか話すまいかで迷っているのかもしれない。
 「アイツは……もう終わった」
 「終わった?」
リンは顔を上げた。
 「あいつの事はお前には話したくない。アキラにだけ話したんだ」
またアキラだ。
 一体何があってアキラを信頼するのだろうか。
カズイになら話すのだろうか。
 「ほら。せっかく俺が来てやったんだ。楽しませろよ」
 変わったといってもこんなところは相変わらずだ。


リンと密会するようになったのは数ヶ月前。
 偶然街でばったり会ったのだ。
 「お前……もしかしてリンか?あの時あれだけ重症だたのに大丈夫だったのか?あれからどうやって助かったんだ?」
 「色々あったんだよ」
 五年ぶりに会ったリンはあの時とは全然違っていた。
あの時とはトシマ脱出時。
 源泉と名乗る情報屋がトシマ外へ通じる抜け道を伝えて回っていた。
その時抜け道の事を聞いたのだった。
それを聞いたトモユキは仲間達と脱出しようと北を目指し走っていた時、遠くでリンのものらしき呻き声を聞いた。
 他の仲間は先に逃がし、その声のする方へ行ってみた。
そこで倒れているリンを見つけたのだ。
 「トモ……ユキか。逃げろ」
 霞む瞳で呻きながらそんな事を言うリンを放ってはおけなかった。
 「んな事したらお前と同類になっちまう。絶対助ける。死ぬな」
その時のリンは誰が見てもこのままでは死んでしまうほどの重症だった。
リンを担いだ時はその軽さに驚いたものだった。
やっとの事でトシマから脱出し、急いで病院へ連れてい行ったのだった。


リンはその時の借りがあると言って月に一度こうして会うことになったのだった。
 「あの時お前に助けられてなければな……」
 「んな事言うなよ。月一で会うって言ったのはお前だぜ。さて今日はどこに行こうかな」
トモユキは鼻歌を歌いながらゲームセンターに向かった。
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 2013年 5月12日 荘野りず

 リンは誰かが助けないとあのままじゃ絶対死ぬよね?
という事でリンに対してツンデレ(だと思う)トモユキ登場。
 映画館のアレはアキラに嫉妬してたんだと思います。



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