微エロ10のお題 カップリング色々で攻略(※お題通り、多少エロいです)

9、体の奥が蕩けそう(リン→カズイ前提 リン→アキラ


彼といるといつもだ。
まるで自分の身体が自分のものではないように、制御不能になってしまう。
 「きっと、カズイに似てるからだ……」
もう二度と会えないと思っていた、あの顔。
それはもういないカズイのものとそっくりで、リンの心をかき乱す。
いつもの廃ビルの中で昂る身体を自分で慰める。
 身体をいじる手の動きが早くなっていく。
 体の奥が蕩けそうで、どうしても刺激が欲しい。
その欲求に従って自信を扱く手に力を込める。
 「……ッツ!」
 呼吸が乱れ、衣服もぐちゃぐちゃだ。
それでもやめられず、毎日同じことを繰り返している。
これも何度目になるのか、数えることはしない。
そうしてしまうと自分の浅ましさを思い知らされてしまうから。


 目を覚ますと、外はもう昼の明るさだった。
 窓から入ってくる日の光が眩しい。
 体中がだるくてすぐには起き上がる気になれず、硬い床の上で大きく伸びをする。
 「……まーたやっちまった」
 昨日のことがぼんやり頭に浮かぶ。
アキラと出会ってから、ずっとこうだ。
アキラにカズイを重ねて、胸の高鳴りを感じている。
カズイとは身体を合わせたことは一度もない。
……少なくともリン自身が覚えている限りでは。
あの頃はそこまで飢えていなかったし、一緒にいられる時間は無限にあると思っていた。
それが突然喪われてリンはひどく後悔した。
もうあんな思いはご免だ。
 同じ顔の人間が三人がこの世には三人はいるという。
その貴重な中の一人なのだ、アキラは。
 初対面の時は性格が違うと感じたが、顔が同じならそれは構わない。
あくまでリンが欲しているのは『カズイと同じ顔の男』なのだ。
これまでまどわしてきた男はリンにあっさり陥落し、心の底からリンを欲した。
 多少淡泊でも、リンが本気になればさすがのアキラでも本気で熱を上げるだろう。
それを想像するだけで楽しい。
 神聖視しすぎて一度もそういう関係になれなかったカズイ。
そのカズイと同じ顔のアキラが現れたのも、きっと神が与えてくれたチャンスだ。
 尤、リンは神など信じたことも信じる気もないのだけれど。
リンは勢いをつけて起き上がると、顔を左右から軽く叩く。
 「よっし、今日もホテルから攻めますか!」
そう底抜けに明るい声で宣言すると、頭の中のドロドロとした感情はきれいさっぱり整理された。


ホテルに着くと、やはり若者でいっぱいだった。
 最近はまたイグラ参加者が増えた気がする。
――まぁ、こんな弱そうな奴らなんて俺にかかれば楽勝なんだけどな。
 冷めた目で参加者を眺めながら、リンはクロークへと向かう。
いつも食糧交換する親父が今日も仏頂面で新聞を読んでいる。
クロークの奥のスペースには、ペットボトルに入った水やソリド、医薬品などが節操なく積まれている。
 「おっさん、写真の現像お願い」
デジタルカメラからメモリーカードを引き抜いて、親父に渡す。
 殺し合いが普通に行われているこの街でも、なぜか写真の現像もしてくれることには最初は驚いたものだ。
 親父はリンの顔を覚えていたらしく、「またか」という顔をしている。
 「……タグ三枚」
 「はいよ」
ウエストバッグからタグを取り出して渡すと、やはり仏頂面のまま親父はメモリーカードを受け取る。
 「お前も飽きないな。こんな街なんて撮っても面白くもなんともないだろう?」
プリンターの電源を入れて、親父はつまらなそうに吐き捨てる。
 「まぁ、そうなんだけど。でも今日のは見せたい相手がいるんだよ」
 昨日の写真はケイスケという邪魔者がいるが、アキラと一緒に撮ったもの。
――あの嫌そうな顔がたまらないんだよなぁ。
 思い出し笑いをすると、親父はフンと鼻を鳴らす。
 「お前が早くイル・レとやれるのを待ってる」
 写真の現像など頼むものはリン以外にはいないのだろう。
 顔なじみの親父は少しはリンに興味を持っているようだ。
 話の間が持たなくなったところで、プリントアウトが終わったようだ。
 「ほら、今回の分だ」
 写真の束を受け取ると、リンは礼を言ってその場を離れた。


アキラとケイスケを見つけたのはそのすぐ後だ。
むこうはリンに気づいていない。
リンの中に悪戯心が湧き上がる。
 向かい合ってソリドを口にする二人の後ろへ、ゆっくりと進んでいく。
 「――そんなことがあってさ。アキラは……」
どうやらケイスケが一方的に喋って、アキラは聞き役に徹しているようだ。
こんなところも少し、カズイに似ている。
――くそっ!思い出すなよ、俺!
 冷静になろうと、気を静めながら、リンはアキラの背後に回る。
ここまでくればいくら鈍いケイスケでも気づく。
 「アキラ、後ろ――」
アキラが振り向く前に、リンはアキラの背中に抱き付く。
 「?!」
 「アキラーおはよー!」
 悪戯成功。
リンは上機嫌でアキラの頬に唇を寄せる。
 「こら、やめろよ!アキラが困ってるだろ!」
ケイスケが慌ててリンをアキラから引きはがす。
その顔は真っ赤だ。
 「ちょっとくらいいいじゃん!……それともケイスケってアキラのことが――」
 「?」
リンはからかいのつもりでそう言いかけた。
アキラは相変わらずのクールな表情でクエスションマークを浮かべる。
この鈍さはある意味貴重だ。
 「わー!何言ってんだよリン!」
 慌てて否定するが、どうみてもケイスケはアキラのことが好きだ。
 「ケイスケ。うるさいぞ」
 無関心にオムライス味ソリドを食べるアキラはどう見てもケイスケの気持ちに気づいていない。
――訂正。やっぱりアキラはカズイとは違う。
カズイだったらすぐにリンの気持ちに気づいてくれる。
その上で、上手くリンを扱ってくれるはずだ。
 「客観的にみると、いい感じだね、二人はさ」
リン自身も自分とカズイの事を客観視できないのに、そんな事を言ってしまう。
 過去の思い出をいつまでも清算出来ていない。
だからその鬱憤をシキに向けてしまう。
その事を自覚できないリンは、いつまで経っても子供のままだ。
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 2014年 2月13日 莊野りず

 このお題、実は三回書き直してます。
パソコンがクラッシュしてしまった時と、バックアップを取らずにリカバリした時と、あとはなんだっけ?
 一番出来がいいのは多分これだと思います。
 原作ベースでリン→アキラにするときに、ケイスケも入れるようになったのは最近になってからです。
ケイスケがライン摂取後になるとどうしてもリンルート沿いになるので、話が似通ってしまいます。
なにかいい手はないものか……。



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