無分類30のお題 →TYPE1

18、輪廻(リン→カズイ)


  

「そういえばお前ら、『輪廻』って知ってるか?」
いつもの面子――アキラ、ケイスケ、リン、そして源泉。
彼らは今、同じくいつもの中立地帯であるホテルで、近況を報告し終えたところだった。
そこで源泉が彼らの知らない話を切り出した。
アキラとリンは「また始まった」と、中年の長話に付き合わされるのかと呆れ顔。
しかし根っからの真面目なケイスケだけは怪訝そうに訊き返した。
「……リンネ、ってなんですか?」
「お前らは知らないだろうが、俺らが若かったころに聞いた話だよ。何度も生まれ変わること。それが『輪廻』だ」
あくまでも簡単に言った。
そこまで様子見を決め込んでいたリンも、やや興味を持つ。
「……それって、死んだ奴にもあるの?」
「前提として、『死んでから』の概念だからなー。あるだろうよ」
源泉はリンの変化には気づいていない様子だ。
「……」
残された傍観者であるアキラには、リンの細かな表情の変化が見て取れた。
「それで、お前は輪廻が存在するとしたら、何に生まれ変わりたいんだケイスケ?」
「えっ?俺ですか!?」
――大体の察しはつく。
当人以外の三人は同時にそう思った。
そしてやはりケイスケが言ったのは予想通りの回答。
「……俺は、アキラの傍にいたいから、エースかディーです」
「誰それ?」
「誰だよ?」
リンと源泉はとっさに訊き返すが、この青年のことだ。
きっとアキラと親しい者の名である事は既に考えるまでもない。
「えっと、アキラの友達の……」
「……『友達』というわけではないな」
ややこしい誤解をされても困るので、アキラが一言だけ補足する。
ケイスケは途端に表情が明るくなる。
「ホントに?」
「……それ以上の事は言わなくても解るだろ?」
「うん!」
――相変わらず、犬みたいだな。
リンと源泉は共通してそう思った。
そしてこれ以上絡まれるのは嫌なのか、アキラは話を振った源泉に訊く。
あくまでも『付き合い』程度だ。
「それで、オッサンは?」
「俺か?俺は生まれ変わっても俺だな」
こちらも大体想像通りだ。
リンは「オッサンがオッサンに生まれ変わって何が嬉しいの?」とからかっているが。
「……そういうお前さんは、何になりたいんだ?」
からかわれた仕返しとばかりに源泉がリンに問いかける。
今までの流れからこうなる事は予想できただろうに、途端にリンは訊き返した。
「え、俺?」
「そっちにお前以外の誰がいるんだよ?」
源泉は新しいタバコを取り出して火をつける。
リンはしばらく考えたようだったが、らしくもない真面目な顔で呟く。
「俺は……星かな」
「おいおい、輪廻ってのは、あくまでも生き物だ」
「意外とロマンティストなんだね、リンは」
源泉とケイスケは彼のややずれた発言に軽くコメントする。
だがアキラには、いつものリンにはない諦念のこもった願望という印象が強く残った。
「……だよねー!俺がマジになるなんてありえないって!」
次の瞬間にはいつものリンに戻ったのだけれども。



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2015年 5月23日 莊野りず

輪廻なんて概念は咎狗世界ではなさそうですが、源泉あたりなら知っててもおかしくはないですよね(何気にシキも知ってそう)。
リンならば星が好きすぎて、星自体になりたいという『無邪気』な意味もありそうですが、星になれば苦しまなくても済む的な感情もあるのではないでしょうか。
それに「星になる」って言葉は子供が「死んだ」という意味でも使いますしね。
その意味でも『星』です。




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