無分類30のお題 →TYPE2

10、反発


  

幼い頃から、兄弟というものは比べられるものらしい。
他の子供はみんな親元から引きはがされたから、俺の気持ちなんて解る奴は少ないだろう。
「こら、シキ君に出来て貴方に出来なわけがないでしょう!?」
一々文句をつけてくる母親がいい加減嫌になって、俺は家を飛び出したんだ。


「う〜サムッ!ちくしょー上着もう一枚くらいは持ってくりゃよかった」
そんなワケで俺は今ホームレス一歩手前にいる。
いや、もう既に半分はホームレスなのかもしれない。
でもあんな家にいるよりはずっとましだ。
俺は俺で強く生きていく。
そう決めたんだから。
ぐうぅぅぅ。
こんな時に腹が鳴るとか、少しは耐えろよ、食欲!
腹が減ると寒さも増すんだよ!
ああ、少し眠くなってきた。
「……女の子が行き倒れ?こんな寒い日に?」
男の声がした。
力が出なくて道路に倒れている所を保護するつもりか?
だが、その前に声を大にして言いたい。
「俺は男だ!」
あ、急に大声出したら、眩暈が……。
「ちょ、大丈夫か!?」
残念ながら俺の意識はここで途絶えた。


ちくたくという、アナログ時計独特の音が聞こえて、俺は薄眼を開けた。
ここはどこかと思ったが、多分さっきの男の家だろう。
家っていうか、アパートだけど。
動かない身体を引きずってみると、炊飯ジャーには白米が炊けていた。
ごくりと唾を飲む俺。
これは人様のものだし、俺は保護された身だ。
何をされても意義はない。
しかし、飯くらいは拾った奴の責任って事で、食べさせてもらってもいいんじゃないか?
そう疑問を感じる前に、俺は白米を勢いよくかっ込んでいた。
その際中、俺を拾ったらしい男が帰ってきた。
俺が炊飯ジャーを空にした事には目を丸くしていたが、元気になって良かったと彼は笑った。
「いい食べっぷりだな。俺はカズイ」
「飯サンキュ。俺はリン。家出してきた」
途端にカズイと名乗った男の目が険しくなる。
「……家出?君、結構いい服着てるし、育ちもよさそうだ。今すぐ帰った方がいい!」
「いやだ!」
「帰れ!」
「いやだ!」
なぜコイツがここまで必死なのかは解らない。
けれど、恩があろうとも俺はもう帰らないって決めたんだ。
俺がそう開き直ると、カズイはため息をついた。
「お前みたいな奴はほっとけないんだよな。……一緒に出てみないか?」
そう言ってカズイが差し出してきたのは『Bl@ster』と書かれたチラシ。
「部屋は提供できるけど、飯代は自分で……ってのがここの方針なんだ。喧嘩とか出来る?」
心配そうに尋ねるカズイに、俺はにやりと笑う。
「こう見えて超強いから。一緒に世界狙おうぜ!」
「ああ、これからよろしくな」
幼い反発心からの家出だったけれど、カズイという理解者を得られたんだ。
家出も悪くないかもな。

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2015年 3月8日 莊野りず

このお題『反発』は二重の意味で反発です。
『親に対して』と『カズイに対して』。
ペスコシ結成ネタいくつかやったけど、自分の中ではいつまで経っても納得のいく内容にならないのが悩みです。




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