無分類30のお題 →TYPE2

13、梯子(アキリンアキ)




テレビのニュース番組はどこも持ち切りだ。
「あーあー。せっかく久々にデートとでもしゃれ込もうかと思ってたのに……」
リンはいつもと全く変わらない様子で、風呂上がりの牛乳を飲んでいる。
「おい、それ以上飲むな!お前がそれ以上伸びたら俺の立場がないだろ」
「へーアキラって肝心なとこでズレてるよねー」
テレビの画面はよく解らない天気図を移している。
このままではこのぼろアパートなど簡単に吹っ飛ぶ。
「あっ……これってうちの近くじゃない?」
「ああ、本当だ」
テレビの画面にはどう見てもこの近辺が移っている。
「……もしかして、ヤバい?」
リンがそう漏らした途端、大粒の雨が降ってきた。



「リン……お前って実は雨男か何かか?」
トンカチを渡しながら上にいるリンに尋ねる。
「やだなー今回は運が悪かっただけでしょ。もしかしたらアキラの方が雨男かもしんないじゃん」
そう言ってぶすくれるさまは、まあ可愛い。
「でさ、なんでこんな事になったんだっけ?」
「そりゃあ大家が年輩だから危ないって……お前から言い出したんだぞ!」
「あれ?そだっけ?」
昨日の台風は無事に立ち去り、今はぽかぽかの腫れ。
古くなったアパートを修理するには絶好の空模様だ。
「あーアキラ、こっち来てよ。ここんとこが解んなーい!」
リンがわざとらしく作った声を出したが、今となっては可愛くもなんともない。
「解った」
そう言って梯子に足をかける。
次の瞬間大きな音を立てて梯子にひびが入った。
「……」
「……」
しばしの無言。
このままではリンが屋根に取り残されてしまう。
「あ〜き〜ら〜」
「いや、悪いと思ってる」
「それがホントに悪いって思ってる顔?」
ついリンとの生活の癖で笑いのツボが安くなっている。


その日の夕方、大家の老人は喚き疲れた二人の寝顔を見て、どこか昔を懐かしむのだった。





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2015年 3月28日 莊野りず

アキリンで台風注意報☆
ポロリはない(当たり前)けど、ちょっとドキリ的な感じ?
大家さんは昔色々あったという裏設定があります。
モブに余計な設定つけんなって感じですが。




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