無分類30のお題 →TYPE2

18、逆流(アキラ→リン)


  

「で、俺はその時さ〜」
わけの解らない、ただ『煩い』としか感じない音楽をBGMに、リンは自慢げに話をする。
その相槌を打つのはケイスケばかりで、源泉は「また始まったか、お調子者」とどこか呆れている。
いつもクラブやホテルで話題を提供するのはリンだ。
この四人の中でのムードメーカーは確かに彼で間違いない。
――でも。
アキラには、あの時喫茶店でみせた冷たい表情――氷のような――が脳裏に焼き付いて離れない。
いつも明るいリン。
いつも元気なリン。
いつも親切なリン。
……どれも同じリンだし、これが『リン』という人間だと認識していた。
つまり、『明るくて親切なムードメイカー』、イコール『リン』。
だが、あの時のリンはまるで別人だった。
「……リンの話にには飽きた。もっと別の話題はないのか?」
アキラ的には『挑発』したつもりだ。
――あの時は、何かがあったのか?
その疑問を解消したくて。
リンから返ってきたのは予想外の反応。
「あーそっか、ゴメンね!そうだよねー、俺の自慢話なんて聴いてもつまんないよねー」
「そりゃそうだろ!」
源泉に頭を小突かれても、明るく笑うのはリン。
――俺の勘違いなのか?
しかし、一度生じた疑惑は中々消え去るモノではなかった。


ホテルで初めて聞いた『シキ』という単語。
リンはその二文字、二音の言葉を聞いた途端顔色を変えてホテルから出て行く。
これにはアキラも呆然とした。
――まさか、あのリンにこんな一面があったなんて。
そう驚いたのは、長身の男から彼を間一髪で掬った時に呪詛を吐かれた瞬間。
憎悪に満ちた瞳は、今やアキラなど眼中になかった。
それほどまでに執念を持つ相手、執着する相手。
あの男に対するリンの激情は、まるで普段の明るい感情が『逆流』したかのようだった。



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2015年 6月16日 莊野りず

アキリンというより、アキラ→リンです。
たまにはアキラから矢印でてもいいじゃない。
手負いの獣状態のリンは大変オイシイです!
茶屋町先生の連載再開はまだですか?





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