無分類30のお題 →TYPE2

19、パラダイム変換(リン→アキラ)


  

――アキラ。
男と寝る、のはトシマに来てからは実は初めてだった。
自分以外の全ての人間が『敵』、そんな事など今まではなかったから。
……『仲間』がいたから。
その仲間もあの男に殺され、その仲間も全くリンを信じてはくれない、信じようともしなかった。
「……」
カズイなら信じてくれただろうか?
そんな、どうしようもない事を考える自分が恨めしい。
こんな女々しい事を考えてしまうのはらしくない。
――アキラのせいだ。
カズイと同じ顔で、でも好きすぎるが故に言えなかった、出来なかったことを、アキラは躊躇いなくしてくれた。
だから、カズイは『アキラにはなれない』。
でも、一つだけ確かな事がある。
――アキラ『だからこそ』出来たんだ。
他の誰もが同じことを言っても、やっても信じられなかっただろう。
それだけ頭の中には常にカズイがいた。
無謀だと十分に知りながらも、あの男に向かっていくのは、きっとそのためだ。
カズイをはじめとした仲間の仇を取るため。
……それが叶わないのならば、いっそのこと終わらせてもらうのも十分にありだった。
「……」
傍らのアキラを覗き込むと、疲れたのか安らかな寝息を立てて眠っていた。
その安らかな顔に安堵する。
――カワイイ寝顔。
裸のままだが、リンはアキラのジャケットを借りていた。
やはり暖かい。
こういう時は自分のものでは温もりが足りない。
――『男が男とヤる』、これも一種のパラダイム変換?
先ほどまで眠っていたためか、らしくもなくそんなことまで考える。
だが、アキラの寝顔を堪能した後で、自分の目的、なすべきことを強く考える。
――仇を取って、ケジメをつける。
たとえ今までの傾向から勝率は低いだろう。
しかし、『ゼロではない』。
だったら迷わず行動するべきだ。

「……信じてるよ、アキラ」

再び会うための希望と決意を、その言葉に込めて呟いた。



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2015年 6月30日 莊野りず

ラストバトル前のリンの心情補完。
勝てないと知りながらもシキに向かっていくリンの心意気が大好きですv
まさしく「漢!」だと。
……最近読んだ北斗の拳のせいか、やけに私の中でバトルが熱いです(笑)。




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