無分類30のお題 →TYPE2


  
今日は二人ともバイトが休み。
更に今日は行きつけのスーパーのポイント二倍ときている。
絶好の買い出し日和。
「鍵は閉めたのか?」
「もちろん。っつても、とられて困るものなんて特にないけどね」
デジカメを片手にリンが笑う。
彼にとって一番大事な形あるモノは、相も変わらずそれだけなのだ。
アキラは呆れつつ、リンが狙うシャッターチャンスをわざと外させた。



アパートは家賃がリーズナブルな分、色々とアクセスが不便だ。
ただスーパーに行くだけでも河原を経由しなければならない。
徒歩三十分のところにあるスーパーをとりあえず目指して歩く。
「あ、リン、アレ撮ればいいんじゃないか?」
アキラが見つけたのは、冬だというのにたくましく咲いている名も知らぬ花だった。
元々冬に咲く花なのか、やけに元気に咲いている。
「えー俺が好きな被写体は人物だよ?あんなもん撮ってなんになるの?」
てっきり反応するかと思っていたが、これは意外だ。
「でもお前、猫の写真はよく撮ってるじゃないか」
「猫は会可愛いから好きなだけ。植物はとっても面白くないの!」
敢えて動くモノを被写体にするのが写真撮影の醍醐味だと語るリンの瞳は輝いている。
アキラはとんだ地雷を踏んだと後悔。
やがて目的地であるスーパーに着いた。


無事に買い物を終えて、二人は帰路につく。
帰りは河原の反対側を歩く。
「……さっきの話の続きだけど、リンには好きな花とかあるのか?」
純粋な興味だった。
男にする質問ではなかったかな、なんてアキラは言ってから思った。
「う〜ん。特にない」
特に悩んだ様子もなく、リンはそう答えた。
逆にアキラは?なんて訊いてくる。
「俺は……クリスマスの時期の赤い花かな。華やかだし」
「へー意外!アキラ、イベント嫌いじゃなかったっけ?」
「クリスマスはどうでもいいけど、あの街にはなが溢れる雰囲気は嫌いではないな」
「じゃあやっぱり好きなんじゃん」
そういうものなのかとアキラはレジ袋をぶら下げた右手で頬を掻く。
しもやけだろうか、乾燥して痒い。
リンはその事にも気づかずに、先にアパートにたどり着くと、鍵を開けて中に入った。


「それでいいの?本当に?」
「その手には乗らない」
すっかり毎日の習慣となった夕食後のポーカー対決は、アキラの三勝五敗で、残るはあと二戦。
最近のブームなのだ、二人の。
リンはトランプを交換しながら呟いた。
「俺は……雑草かな」
「何が?」
アキラも手札を全てチェンジ。
「だから、俺の好きな花」
先ほどの事かとアキラは思い至る。
「雑草って、花か?」
カードオープン、アキラはブタ、リンはツーペア。
四ってこの勝負はリンの勝ちだ。
「花でしょ。あの踏まれようが引っこ抜かれようが、最後には花を咲かそうとする根性が好きだ」
「ぷっ」
思わずアキラは吹き出した。
「ちょっと!何がおかしいの?」
だって、それはまるでリンの生き方そのもの、根性のあるところはリンそのものではないか。
「いや、リンらしいって思って」
アキラが微笑んでいるのを見て、からかっているわけではないと悟ったようだが、その表情はどこか怒ったように見える。
「俺はリンのそういうところに弱いのかもしれないな」
多分これは『惚れた弱み』という奴だ。
先に惚れたのはリンの方だが、いつの間にかアキラの方が夢中になっている。
オーカーは後一戦残っているが、とてもではないが勝てる気はしない。
「雑草か……リンらしい、本当に」
そうアキラは満足して、再び微笑むのだった。






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2015年 4月21日 莊野りず

「雑草という植物はない(だっけ?)」、そうです。
植物図鑑(小説)でそう書いてありました。でも、雑草ってカテゴリはあると思うんですよ。
リンは根性ありますよね、それに男前。
だからこそリンには敢えて綺麗な花ではなく雑草だと例えたいんです。
もちろん耽美な薔薇も似合うと思うけど、それよりはひまわりというイメージ。
        






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