無分類30のお題 →TYPE2

24、つむじ風(リン→アキラ)


  

彼方から吹いた風が、呼び止めるように包み込んで離さない。
さらさらの髪は風に揺られて好き方向に向く。
「……」
どれだけこの景色に憧れていただろう。
どれだけこの風景を胸に抱いていただろう。
それほどまでに彼にとっての『外』は久しぶりだった。


「あーつむじ風なんて感じたのは久しぶりだよ!」
誰に言うでもなく、彼は呟く。
ここ数ヶ月はリハビリで時間を取られ、その前の数ヶ月は大手術だった、らしい。
彼――リンが目覚めた時には全ては終わっていた。
因縁の敵である兄との勝負も、トシマからの脱出も、大手術も、全て。
どれ一つ無駄なピースはないと思っている。
どれもリンの成長に欠かせないものだった。
そう素直に思えるのはリンが成長したからか。
「……」
しばらく考えて、やめた。
棲んだことを今更ほじくり返してもただの時間の無駄だ。
そんな事より、早くアキラに会いたい。
会って、今までの空白の時間を埋めたい。


「リンさーん」
今まで付きっ切りだったナースが彼の名を呼ぶ。
振り向くまでもなく相手は解る。
「はい?」
「まだしっかり骨が繋がってないんだから、動いちゃダメでしょ?」
「はあ、すみません」
また、風が吹く。
今度は先ほどのものより大きい。
「……看護婦さん」
「なぁに?」
「俺には待ってる人がいるんです。でも俺が向こうに行くまで……」
「待っててくれるわよ」
最後まで言っていないのに、彼女は鋭く言った。
「なぁに、五年なんて短いわ!君ほどの美形なら待っててくれるわよ」
そう言ってリンの肩に手をかける。
またまた風が吹く。
この風のように自由にアキラの所へ飛んでいきたい、なんてロマンチックすぎるかな。
リンは大人しく看護婦と共に病院に戻った。





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2015年 7月17日 莊野りず

一番最初の一文は追憶の風より。
あれ本当に素敵な曲ですよね!
最初の案ではアキラと再会まで行く予定だったんですが、あまりお題から外れるのもな〜と思って没にしました。

 



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