無分類30のお題 →TYPE2

26、枕(アキリン)


  

――いつからだろう、誰かと寝ることが当たり前になったのは。
――いつからだろう、誰かと一緒じゃないと眠れなくなったのは。
――いつからだろう、この時間に不安になることが増えたのだろう。

一体いつから――?


「あれ?」
いつの間にか一緒に寝ていたはずのリンの姿がない。
思わず時計に手をやると、まだ夜中の二時だ。
どこにも行く場所などないはずだと思いつつ、リンが実は不安定な精神の持ち主だと知っている。
兄に勝ってもまだ仲間との思い出は消えないらしく、時々うなされている。
「リン?リン?」
こうして名前を呼んでいると、まるで飼い猫の様だ。
しかしリンはもちろんかい猫ではないし、れっきとした人間だ。
この時期に外に出たのだろうか。
今日、いや昨日は雪が降っていたし、外に出たとは考えづらいか。
そんな事を思いながら、リンのために布団を温めておく。
三十分経っても戻ってこない。
これは余程のことだ。
アキラはパジャマの上から上着を羽織ってベランダに出る。
予想通り、そこには身を縮めた猫のような恰好でリンがいた。
「あ、アキラ」
少し戸惑ったのは怒られると思ったからだろう。
「お前な、枕を濡らすほど悲しいんならはっきり言え」
「……ゴメン」
リンからの謝罪も聞けたし、質問だけしておこう。
「それで、何で泣いてんだよ」
「……怒らない?」
「ああ」
「……嫉妬しない?」
「それは多分無理だ」
リンのいい分なんて大体知れている。
それでもリンの口から聞きたい。
「……今日はカズイの記念日だったんだ。今の家にもらわれて……」
これでアキラは聞いたことを後悔した。
「解った、もういい。もう……しゃべるな」
居場所を亡くした者たちの居場所。
それペスカ・コシカだったのだろう。
「明日はゆっくりするか」
湾曲表現だが、リンにはちゃんと解っている。
それでいいのだ、きっと。




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2015年 8月2日 莊野りず

リンって腕は立つのにアンバランスにメンタル弱かったですよね。
そこに萌えるし痺れるわけですが。
男前なリンはもちろん大好きですが、





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