貴方に願う10のお題 レイジナ・アベレアで攻略

3、もっと頼りにして(レイジナ)


前線で戦う者たちの治癒。
それが私に与えられた役目だった。


 「ふ〜ボロボロだよ」
 「あたし、早くシャワーでも浴びたい」
 戦闘が終わると口々にそんな言葉が飛び交う。
 前線に出ていない私にはその苦労は推して知るしかない。
 「姉さん!」
 連戦で出撃していたレイジは、一番に私に向って走り寄ってくる。
 「レイジ」
 私は黙って力を愛護の杖に向って込める。
すると、あっという間にレイジの皮膚に数多くあった傷が治癒する。
 「姉さんは前線に行く必要なんてないんだ。ここで仲間を癒していればいい」
レイジの目は真剣だった。
 「でも私は速剣なら使えるわ。もっと私を頼りにして?」
 私は微笑んでそう言った。
レイジは難しそうな顔になった後、私の傍から離れていった。


 人間達が相手ならまだしも、天使が相手になると苦戦を強いられる事になった。
 流石は同じ翼を持つもの、というところか。
 私はいつものように後方から援護や傷の治癒を担当していた。
――メルディエズ。
フォレスターの研究所で会った彼はどこかいつもの彼じゃなかった。
そして魔王城で私がレイジに頼んだ事は本当に正しかったのだろうか。
……いや、今はこの大聖堂を抜ける事だけを考えなくては。


メルディエズを倒した。
レイジの仲間達は大喜びだったが、私は彼の最期があまりにもあっけなくて安心できなかった。
 「……私の、愛?」
 「姉さんの愛なんてこいつには欠片もくれてやらん」
レイジは冷淡に見下ろして、メルディエズを鼻で笑った。
……何か嫌な予感がする。
 今までも何度か経験したことのある勘、その勘はほとんど当たった。
――でも大丈夫よ、メルディエズはもう倒したじゃない。
そう心に言い訳しても、襲う不安は濃くなるばかりだった。


 玉座について最初の演説のときの事だった。
 「私の最愛の弟に――」
そこまで言ったときに悲鳴が聞こえた。
 女の声だ。
それも、この声は私がよく知っている――。
 「ヴィディア!」
 続いてギルヴァイスの声。
まるで悪夢でも見ているのかと疑いたくなるほど魔王城は悲鳴、怒声に満ちている。
 大勢の中に自分から飛び込み、県を振り回しているのはレイジだ。
その様は壊れたとしかいいようがなかった。
やがて多くの悪魔達で溢れていた魔王城には私とレイジしかいない。
 「……姉さんはさ、俺たち悪魔に魔力を供給してくれてるから、その時点で俺たち姉さんに頼ってるんだよ」
そしてレイジは長い腕を振り回した。
 「姉さんのおかげで魔力も有り余ってる。あれだけ暴れてもピンピンしてる」
 私は絶望した。
この子はタガが外れてしまったんだ。
 彼の気が私にあるのを何となく知っていた。
だけど姉弟だし、そんな事にはならないと油断していた。
 結果はこうだ。

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 2012年 月日 荘野りず

 たまには姉さん視点。
 姉さん的にレイジってどうなんでしょうね。
 姉さんルートは常にバッドエンドばかり書いている気がします



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