貴方に願う10のお題 レイジナ・アベレアで攻略

4、この手を拒まないで(レイジナ)


……この手を拒まないで。
 僕を一人にしないで。
 吹雪は無常に、少年の身体を包み込んだ。


 「何?レイジ」
ヴィディアはレイジに掴まれた手をそのまま握り返した。
レイジの表情に変化はない。
 「いや、なんというか。俺の手に姉上の手触りがあったような……」
その言葉でギルヴァイスが笑う。
 何が面白いのだろうか。
 「レイジはなかった事を捏造してるんだ。大体あのジーナローズ様が手を繋ぐなんて……」
レイジは既にそこにはいなかった。
 燦然としたギルヴァイスの言う事など相手にするだけ無駄だという事だ。
 「レイジィ!」
ギルヴァイスは声の限り叫んだ。


 「で、これは何なの、レイジ」
ここはジーナローズの私室。
ジーナローズとレイジの左手の指には指輪が嵌められている。
その指輪からは赤い細い糸が二人の間を繋いでいる。
 「俺と姉さんの愛の証だ。……まさか拒んだりしないよな?」
レイジの瞳は本気だった。
こんな時は素直に従った方が身のためだ。
 自然と身体が硬くなっていたらしい。
レイジが手を繋いだまま身体の不調をチェックしていく。
 「いいの、気にしないで。私はなんともないから」
 必死でそれだけ言うと、レイジは手を休めた。
しばらくすると、しょんぼりと首を垂れた。
 「俺じゃあ姉さんの事を包み込むことなんてできないんだ!」
まるで赤子のようにレイジは身を包み込んだ。
ジーナローズは何が起こったのかよく解らない。
そんな時、レイジが何事か呟いた。
 「この手を拒まないで。……一人にしないで」
ジーナローズにとってはじめてみた弟の一面だった。
レイジといえばジェネラル・テンペストといわれ、恐れられるのに。
こんな零時の一面を知った途端、レイジが愛しくなった。
――なんて臆病で愛らしい子。
ジーナローズは意識のないレイジを抱きしめた。


 「え、姉上が?」
ギルヴァイスがレイジのために作った城で、ギルヴァイスはレイジ宛ての招待状を読み上げた。
ジーナローズが自分の城――つまり魔王城――に遊びに来ないかというものだった。
 勿論レイジの返事は即参加だ。
ギルヴァイスはやれやれというように手を左右に振った。


 「レイジ!」
 来てくれたのね、という挨拶もそこそこに、ジーナローズとレイジは再会を喜び合った。
みんなの前で抱き合ったりもした。
レイジにとって何より嬉しかったのは、ジーナローズが自分の手を拒まなかった事だ。
こんな事は生まれて初めてだ。
それからレイジはジーナローズと踊り明かした。

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 2012年 12月21日 荘野りず

 これはレイジ視点のレイジナでしょう!と思って書いたもの。
たまには姉さんが誘ってもいいじゃない。



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