貴方に願う10のお題 レイジナ・アベレアで攻略

5、夢を聴かせて(アベレア)


希望なんてない。
 貴方に出会うまでわたしはずっとそう思ってました。


ハルフォルト教会から強奪したインセストはレアと名乗った。
 栗色の髪に蒼い瞳が印象的だ。
 「これでお前は教団からは自由だ。けどオレ達はお前達インセストが必要だ」
 黒い翼の少年――アベルはそう言った。
 「つまり、わたしは本当に自由ではないというわけですね」
レアは微笑んだ。
 「それでも、もう一度外の景色を見たいというわたしの願いは叶えられました」
 「……お前、変だな」
  レアは口角を上げた。
 「そうでしょうか?」
もう一人の黒い翼の男――アラギは声を上げて笑った。
 「お前も変な女をさらってきたもんだな、アベル」
アベルはむっとしてアラギを睨んだ。
レアは瞳を輝かせた。
 「貴方のお名前はアベル様というのですか?」
 無垢な視線に、アベルはただ頷いた。


アベルによるインセスト強奪は日に日に増えていった。
 最初は三人だけだった一行も人数が増えてきた。
なぜかアベルはレアの力には手をつけなかった。
 何のためにさらってきたんだ、とアラギにからかわれたが、どうしてもその気になれなかった。
 他のインセストで済ませてしまう。
 最初は何も言わなかったレアも最近では不審に思っていた。
 「なぜアベル様はわたしの力を使わないのですか?」
 一度そう訊ねたこともある。
 「お前の力を使う必要が無いからだ」
アベルの返事は煮え切らない。
だんだん他のインセストが羨ましくなった事さえある。
 教団に極限まで責められて長い苦しみを味わうよりは、すぐに済む方法で死んだ方がどれだけいい事か。
 「わたしの力を使ってください」
そう言った事も一度や二度ではない。
 今回も同じ事を言ったら、アベルは似合わない事を訊いてきた。
 「お前の夢はなんだ?」
レアはきょとんとした。
 一瞬何を言われたのか解らない。
 「わたしの……夢?」
アベルはイライラしたように頭を掻いた。
 「一つや二つはあるだろう?」
 幼い頃は何かになりたかった気がする。
でも急には思い出せない。
 今の自分の夢、それは――。
 「最後までアベル様のお傍にいて、役に立つ事です」
 色々考えてみたが、やはりこれしかない。
アベルは虚をつかれた。
 「……お前はやっぱり変わってるよ」
 懐かしい事を言われた。
 最初はなんとも思わなかった言葉が、今ではこれほど嬉しい。
 「変わっていてもいいのです。アベル様の幸せが、わたしの幸せですから」
レアはにっこりと笑った。


それから時間が経ったキボートス島。
いつまでも一緒にいるゼロとレアの姿があった。
あの時と違えども、二人は幸せだった。

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 2013年 1月3日 荘野りず

 ほのぼのハッピーエンド版アベレア。
 生き残って幸せになるにはスペシャルエンドしかないあたり、妄想が広がります。



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