６、前だけを見つめていて（アベレア）

貴方のような方は初めてです。
わたしの夢、それは貴方とともにあることです。


どうしましょう。
アベル様とアラギ様が喧嘩している。
 止めに入ってはどうしてもしこりが残る。
そもそもけんかの内容が、ペインリングがどうのこうの。
これでは宥める事もできない。
わたしは夕食のシチューを温め始めた。


 「ふーん。今日はシチューか」
アラギ様がつまらなそうに言う。
わたしとしてもアラギ様は苦手なので黙っている。
 「……熱過ぎるな」
アベル様も熱いと指摘する。
 今日は材料を奮発して作ったのに、イマイチだったのかな？
 精一杯努力したけれど、これ以上のものを作る自信がない。
 「オレ、ちょっとカインの様子を見に行く」
 「えっ！それならわたしも……」
 「お前はここで待っていろ」
アベル様にそう言われてしまえば返す言葉はない。
わたしは絶望感を胸にアベル様の帰還を待った。


そして帰ってきたアベル様は、よほど疲れたのかソファーで横になった。
そのまま眠ってしまった。
 「コイツもまだまだガキだなぁ」
アラギ様がからかうように言う。
でもわたしは。
 「いつも前だけを見つめている方です。その輝きが眩しいくらいです」
わたしはアベル様の寝顔をじっと見つめている。
きっとこの方が、わたし達インセストに明るい未来を示してくれるに違いない。
わたしはそんなアベル様が大好きです。

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 ２０１３年　１月２５日　荘野りず

 レア視点、ほのぼのアベレア。
きっと彼女は心底アベルに感謝してるんだろうな、と思って書いたものです。




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