悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

10、教えてよ(ヴィディア→レイジ)


色々なことをした。
 髪を伸ばしてみたり、ジーナローズ様の真似をしたり。
……でもレイジは振り向いてくれない。
どうしたらいいの?
 教えてよ。


 魔王城の中庭で、あたしは毎日兵を鍛える。
 「踏み込みが甘い!そんなんじゃ相手に翻弄されるだけよ!」
 大剣を全力で押し返して、あたしはそう指摘する。
 「うわっ!」
 三人の兵は無様に転んだ。
 「いてて……ヴィディア様は厳しいですよ」
 「そうそう。そんなんじゃジェネラルに相手にしてもらえませんよ」
 「なっ……!なんであんたたちがそんな事知ってんのよ?」
 頬が赤くなるのを感じる。
そう、あたしはレイジが好き。
 髪を伸ばしてるのだってレイジに振り向いてもらうため。
 「まるわかりですよ。気づいていないのはジェネラルだけだと思いますよ」
 負けたからってそんなこと言うのは卑怯だと思う。
 兵たちは愉快そうににやにや笑ってる。
 「……ランニング五十週」
あたしは魔王城のランニングコースを指さして言ってやった。
 彼らはブーイングをしてるけど、先に言ったのは向こう。
あたしは悪くない。
 嫌々走り出す彼らを見送って、次の兵に声をかけた。
すると後ろから彼の声がした。
 「順調か?」
この声は間違いない。
 「レイジ!」
 顔を見る前から解ってる。
やや不機嫌そうな、冷たい顔。
でもあたしは知ってる。
ジーナローズ様の前では笑みがこぼれるってことを。
 「天界に進行する日も近いかもしれない。鍛えてやってくれ」
 「え?天界に?」
 「姉上が天使どもとの和解を進めてはいるが、奴らは強情だ。この魔界もいつ戦渦に巻き込まれるか解らない」
またジーナローズ様。
レイジの口からジーナローズ様の名前が出ない日はない。
そんな不満を出さずにあたしは相槌を打つ。
 「魔界が戦場になるっていうの?天使だってあたしたちと同じくらいしかいないのに?」
 「人間どもに働きかけているらしい。姉上は人間を殺すなと厳命を出した。兵たちにも言い聞かせておいてくれ」
 「……了解」
 用が済むとレイジはすぐに城の中に戻ってしまう。
 寂しいけど仕方がない。
これがあたしのジェネラルの腹心としての仕事だから。
 「お願いします」
 「全力で行くわよ」
あたしは兵に一太刀入れる。


 「よう。休憩か?」
 休憩するために城の中に入ったあたしが会ったのはギル。
 「まぁね。ギルは?」
 「オレはレイジに頼まれて魔界の調査
。部下の情報待ちだ」 ギルはコーヒーを飲みながらそう言った。,br> 忙しいらしく、寝癖もそのまま。
 「ふーん。レイジはなんて言ってた?」
 「それは秘密。極秘命令だからな」
 時々思うけど、ギルはずるい。
 城の中でレイジと過ごせるんだから。
 「お前が何考えてるか当ててやろうか?ずばり、オレと部署が逆だったらと思ってる!」
 「なんで解るの?」
ギルはコーヒーを一口飲むと得意げに言った。
 「お前はレイジの事が好きだろ?だからオレが羨ましいんだろ」
 「……よく解ったわね」
 「まーな。オレはお前とレイジとは違って頭脳労働担当だから、何でも解るの」
あたしも喉が渇いたのでミルクを飲む。
 「じゃあ教えてよ。なんでレイジはあたしを見てくれないの?」
この質問には間があった。
ギルは気の毒そうに言った。
 「レイジにはジーナローズ様が全てだからな。あのお方が死ぬ時には一緒に死ぬだろうな」
そこまで想ってるの?
それじゃ、あたしに勝ち目はないじゃない。
 「勝てるとしたら、そうだな……記憶がなくなればお前を見てくれるかもしれないな」
でもそんな事、レイジがジーナローズ様を忘れるなんてあるはずないじゃない。
 誰か教えてよ。
レイジがあたしだけを見てくれる方法を。

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 2013年 9月11日 莊野りず

 ヴィディア→レイジも結構好きです。
ギルヴァイスはなんだかんだ言ってヴィディアの味方をしてくれそうな気がします。
 記憶喪失前のレイジは色々危ういけど、そこがいいです。
 魔王城に中庭があるというのは想像です。



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