悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

11、抱きしめちゃだめ(レイジナ)


抱き締めちゃだめ。
そう言われてるみたいだ。
けど俺はやめない。
 愛してる、姉さん。


その時レイジの部屋の前を通った。
 「こら姉さん。そんなに甘えなくても」
レイジの嬉しそうな声がする。
それより今、姉さんと言わなかっただろうか。
 「ジーナローズ!そんなところ舐めるなよ」
 二人は固まった。
ジーナローズは彼ら悪魔の王。
こんなところにいるわけがない。
いくら弟とはいえあのジーナローズがレイジと仲睦まじくしているなんて。
 「姉さんは甘えん坊だな」
 可哀想な二人は聞かなかったことにした。
 「……私たちは何も聞いてないよね?」
 「聞いてないよ。大丈夫!」
 何が大丈夫なのかは解らないが、二人の頭の中は混乱していた。
――レイジ様とジーナローズ様が、そんな。
――ギルヴァイス様、何か言ってください。
 二人の足取りはふらふらしていた。
 「ジーナローズは可愛い」
レイジの呑気な声が二人を混乱させた。


 次の犠牲者はヴィディア。
 彼女は貰い物の菓子をレイジと一緒に食べようと彼の部屋に行った。
 「レイジ?お菓子をもらったんだけど、一緒に食べない?」
 「ごめん。今姉さんと遊んでやらないと。構ってやらないと姉さんは泣くから」
 「え?」
ヴィディアも固まった。
――姉さんって、ジーナローズ様よね?どういう事?
 「ジーナローズ!おいたをすると抱しめちゃうぞ」
 金属で殴られた気分だ。
 「そ、そう。それは残念ね」
ヴィディアも持ってきた菓子をレイジの部屋の前に置いて立ち去った。
――これは夢よ。悪夢だわ。
そうぶつぶつと呟いていたと城の侍従はのちに語る。


 「はあ?ジーナローズ様がレイジの部屋に?」
 部下から報告を受けたギルヴァイスは素っ頓狂な声を出した。
ありえない。
レイジはともかく、ジーナローズはそんな事をするとは思えない。
 彼女たちの聞き間違いだろうと思ったが、一応ジーナローズの予定を確かめてみる。
ジーナローズの今日の予定は施設の慰問。
 城にいるわけがない。
 「まさかあいつ……!」
ありえそうな可能性を考えて呆れる。
 「そこまで痛い奴だったのか」
ギルヴァイスは二人の部下を連れ、レイジの部屋に急いだ。
これ以上誤解を生むわけにはいかない。


 「なんだ?俺は忙しいんだが」
レイジは部屋から出ると不思議そうに言った。
 「入るぞ」
 「いや、待てよ。ここは俺の部屋」
レイジが拒否をしても無理矢理部屋に入ろうとする。
 扉と部屋の隙間から小さな塊が転がってきた。
 「あっ」
 「あっ」
ディールとフィリスは目を見張った。
にやーと鳴いたのは子猫だった。
 「待ってくれ姉さん!」
レイジが子猫を抱き締めた。
 部屋を出たレイジの足に絡みつくもう一匹の仔猫。
 「ジーナローズ」
 慌ててもう一匹も抱き締める。
 「……こういうわけだ」
ギルヴァイスはため息をついた。
 「なるほど……」
 「『姉さん』と『ジーナローズ』という名の猫ですか」Mbr> 一気に疲れた。
 脱力する三人と子猫を抱えるレイジ。
 「姉さんには言わないでくれ」 「安心しろ。ジェネラルがそんなに痛い奴だと知れたらオレらも恥ずかしい」


その頃、一人真実を知らないヴィディアは落ち込んでいた。
 「ジーナローズ様とレイジが……そんな!」

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 2013年 10月6日 莊野りず

前のサイトでアップしていたものです。
サイトが消えちゃったので書き直しました。
レイジナでギャグを書くときはレイジが痛くなるのは癖です。



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