悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

13、耐えられない(レイジナ)


ずっと一緒にいた。
そしてこれからもずっと一緒だ。
 俺は剣を握りしめる自分の手の力を感じながら、それだけを想った。
 目の前で血の花が咲く。
 一人、悪魔が倒れる。
 剣の重量を感じなくなっていく。
 羽のように軽い剣を握りしめ、俺は踊るように身を翻す。
また一人、倒れる。
 右に振り上げた腕は、容易く急所を直撃し、刃向う間もなく相手は倒れる。
ふと周りを見ると、ユーニが上機嫌で羽を毟っている。
――アイツらしいな。
いつもは恐怖を覚えるユーニの行動も、今は全く怖くなく、微笑ましいとさえ思える。
 左側から斧を構えた一団が俺を狙う。
 左側に構えた剣で斧を撥ね飛ばし、そのまま身を切り裂く。
 半身を失った悪魔は、きっと自分の死を受け入れる間もなく息絶えたのだろう。


こうして、魔界の崩壊は始まった。


 「ねぇレイジ!こんなにいっぱい、悪魔のかっこいい翼が手に入ったよ!」
ユーニはあれから満面の笑みで翼を狩り続けた。
その結果、謁見の間には黒い翼の山がいくつもできている。
その中には共に戦ったヴィディアとギル、パージュたち仲間のものも含まれている。
 翼を持たないアンジェラは、母性に目覚めたパージュによって守られていた。
しかし、アンジェラを巻き込まないようスクィーズの能力を一切使わないパージュにはユーニから身を守るすべなどなかった。
ユーニはそれを知っていて、わざと見せつけるように、アンジェラから嬲り殺しにした。
その間パージュは必死に何やら叫んでいたが、そんなことを気にかけるようなら、ユーニはフェザサイドと呼ばれていない。
アンジェラを殺されたパージュはまさしく鬼気迫る強さでユーニに向かっていったが、予め追っていた傷が勝負を分けた。
 片足を失いながらも勝利したユーニはその事を全く気にせず、躊躇いなくパージュの黒き翼をもいだ。
その後、死体の山の中からギルのものを見つけると、つまらなそうにその翼ももいだ。
 「やっぱり悲鳴を上げて抵抗しないとつまらないよね」
ユーニの感想はこんなものだった。


 謁見の間にいた悪魔の中で、残ったのは俺とユーニ、そして姉さんだけ。
 残りは逃げ出したか、死体になったかのどちらかだ。
 「ねぇ、他の悪魔はどうするの?皆殺し?それともほっとくの?」
ユーニは遊びの相談でもするかのように気軽に訊いた。
 「もちろん、俺と姉さんの邪魔をするなら生かしておくつもりはないな」
 姉さんは、さっきから城にあいた穴から上空を眺めている。
その眼には何の意志もなく、ただ虚ろに周りのものを映している。
――壊れたのか?
 俺は希望と失望という、二つの感情が半々だ。
もし壊れたのなら、俺の存在を無理やりにでも、手段を選ばず心に刻みつけることが出来る。
 壊れていないなら、姉さんは俺から目を背け続ける、今の状態と変わらない。
 「……ねぇ、レイジってば!」
 姉さんを見つめる俺に、ユーニの騒がしい声が届いた。
 「何だ?羽はもういいのか?」
 「いくら好きでも、こんな痛んでるものばっかじゃつまらないよ」
お気に入りのギルの翼の扱いも些かぞんざいだ。
 「……そうか。つまらないか」
ユーニが頷く前に、俺は手にした剣をユーニの心臓へと突き刺した。
 「あ……れ?レイ、ジ?」
コイツの素早さは厄介だ。
 一緒に戦ってきたからこそ解っている。
 「さよならだ、ユーニ。お前の相手は楽しかった」
ユーニは床に両膝をつくと、剣を抜こうと腕を前に回す。
しかしユーニの非力さでは、そんなことは無理だ。
 「……ボク、死……ぬの?」
 今まで散々殺しておいて、ユーニは諦めが悪い。
 喉からヒューヒューと声にならない音が空しく響く。
 「ああ」
 俺の一言で、ユーニは絶望に顔を歪めた。
 何か言おうと口を開けたが、そこから出てくる言葉はなかった。
それが魔界中に名を馳せたフェザサイドの最期だった。


 「姉さん。起きてくれ。俺だよ、レイジだ」
 床に倒れ込むように、身体を預けている姉さんに、優しく俺は囁く。
 反応はなく、目は虚ろで、俺の姿を映してはいない。
またあの時の――人間たちに殺される前の、何も映さない瞳に戻っている。
 「……愛してるよ、心から、誰よりも」
 俺は姉さんの唇に指を寄せ、優しくなぞる。 それでも、反応はない。
 本当に心が壊れてしまったかのようだ。
そのままゆっくり、床に押し倒す。
ドレスを軽く脱がせても抵抗はない。
 俺は姉さんの白く柔らかな肌に指を滑らせる。
そのまま唇を重ねる。
 「……ふっ……あっ……」
 舌を差し入れて、口の中を犯すと、やっと苦しそうな喘ぎ声が漏れた。
 嫌がっている様子はないが、壊れてしまっているのなら、それも当然のことだ。
 「……姉さん、愛してるよ」
 唇を離すと、物足りなさそうに舌を絡めてくる。
 「……これでは足りないか?」
もう一度、長い時間をかけて唇を合わせる。
 「……ぅ…ん」
やっと目に光が灯った。
 力強さは感じないが、このまま続けてほしいと訴えかけるような、そんな光が。
ドレスの下――胸元に手を這わせると、切なげな声が漏れる。
 柔らかい姉さんの肌を独占しているのが、あれだけ拒絶してきた俺だということに、姉さんは気づいているのだろうか。
 気づいていてやっていたとしても、単純な事に、俺は興奮する。
 「……どうする?続けて欲しい?」
 虚ろな目のまま、頷く姉さん。
 意志はなくとも、本能によって反応しているとしか思えない。
――俺たち悪魔にも本能なんてあるんだな。
 今まで意識したことのない、そんな些細なことに俺は感心する。
 「……ここでする?それともベッドルームに行くか?」
こればかりは声を出さなくては意思表示が出来ない。
あの声で俺を受け入れてくれる瞬間を、俺は肌を味わいながら辛抱強く待つ。
ドレスはすでに半分は脱がしてあり、腰のあたりまで露わになっている。
 胸元に顔を寄せ、頬を寄せる。
そこからは確かに心臓の脈打つ音とほのかに甘い姉さん独特の匂いがした。
 「……ここじゃ、いや」
か細い、小さな声だった。
 「……やっと声を聴かせてくれたね。でもごめん。最初から移動する気なんてないんだ」
 耳元で囁くと姉さんの身体は電流でも走ったかのようにビクンと震えた。
その反応が嬉しくて、そのまま耳朶を噛む。
 「……ひどい」
そんな罵りの言葉さえも嬉しい俺は、もう末期なのだろう。
 俺は片手で胸元をいじりながら、もう一度耳元で低く囁く。
 「もう俺たちの他の悪魔はすべて殺そう。そして、俺たちの子供で魔界を再び栄えさせよう」
 俺と姉さんの子供でいっぱいのこの世界。
それを想像しただけで愉しみで口元が歪むのが自分でもわかる。
 姉さんは小さくいやいやするように首を振る。
そんな仕草も愛おしい。
 「……無駄だよ。姉さんじゃ俺には敵わない。そんなことは解っているんだろう?」
――愉快で、楽しくて、笑いが止まらない。
 「これからはずっと二人きりだ。時間は永遠にある。……さぁ、俺たちの天国は始まったばかりだ」
そう、これからはずっと一緒にいるんだ。
 「いや、耐えられない……!」
 皮肉なことに俺の想いが伝わった時に戻った瞳の光は、俺の言葉によって再び暗く、虚ろになるのだった。


それから先の事は、誰も知らない。

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 2014年 月日 莊野りず

……いや、色々とすみません。
 最初はもっと軽い感じになるはずだったのに、ドシリアスのド鬼畜仕様になってました。
パージュとアンジェラがうちでは珍しく酷い目に遭ってますね。
ユーニvsパージュって、スクィーズがなかったらユーニの圧勝だと思うんですが、どうでしょう?
レイジナも色んなものを書いてきたので、ここいらでレイジに頑張ってもらいました。
 個人談ですが、ジーナローズルートってあの後にこういう展開が絶対あったと思うんです。
ただ、それをやっちゃうと18禁になるからやらなかっただけで……。
 悪魔でもこれはキスとその少し先ですよね?18禁ではないですよね? 



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