悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

5、涙の理由(ゼロ→レア→アベル)


レアはゼロに懐かれている。
アベルだった少年は悪戯っ子になった。
あの戦いの後、ゼロとレアはカイン達と生活するようになった。
 奇跡的に一命を取り留めたレアはゼロを愛しく思っている。
でもアベルだった頃をどうしても思い出してしまう。
――アベル様はもういないのに、なぜこんなにも苦しいのだろう。
レアは人知れず涙した。


マティアはゼロを叱った。
また服にカエルを入れたのだ。
カインやレアがいくら言ってもゼロの悪戯好きは直らない。
いや、ゼロにとっては悪戯ではない。
 真偽を疑われたので証拠を見せただけ。
その言い分には流石のレアも苦笑した。
 「ゼロはマティアさんが好きなんですね」
レアは微笑んでそう言うが、ゼロはそれを否定する。
 「違う。オレが好きなのはレアだ」
アベルと呼ばれていた頃に比べるとやけに素直になった。
それは喜ばしい事だ。
でも、レアは素直に喜べない。
アベルの抱えていた闇や苦しみを身をもって知っているから。
 彼の抱えていたものは全て消えてしまったのだろうか。
だったら彼の存在した理由はどうなのか。
 闇は所詮闇でしかないのか。
レアは自分に問いかけた。
――アベル様はこれで満足なんですか。
でも答えは出ない。


 「レア!」
 「カインさん」
ゼロの目を逃れて一人でキボートス島の世界樹跡に来ていた。
カイン達と最後に戦った場所だ。
 「どうしたの、こんな所で。ゼロが寂しがるよ」
カインが明るく言った。
レアは俯いて涙を隠した。
 「……ゼロは」
 「ゼロがどうかしたの?」
 自分以上に幼い印象になったかってのアベルを想像しながら先を促す。
 「ゼロはアベル様ではないんですよね?」
 涙声が出てしまった。
カインはそれに気づかない。
 「元アベルだけど今はゼロだよ。それでいいじゃない」
 敵対していたとはいえ、ゼロに慕われる身だ。
ゼロの事を否定されたくはない。
 「わたしは……アベル様の事が好きでした」
 今更何を言うのだろう。
もうアベルはどこにもいないのに。
レアの言葉の真意がわからない。
 「自分ではどうしようもないくらい、好きでした。大好きでした」
 涙を隠すのをやめたレアは開き直ったように言った。
カインはレアの涙をはじめて見た。
 「でもアベル様はもういない。どこにもいないんです」
 「涙の理由はそれ?」
 思い切り泣いたのか、涙の洪水は止まっていた。
レアは頷く。
 「確かにキミはアベルが好きだったのかもしれない。けどアベルはもうどこにもいないんだよ。ゼロはアベルが望んだ姿なんだよ」
カインも少し泣き出した。
かつての敵がいないことを寂しく思う。
 「ゼロはキミの事が好きなんだよ。解かってあげてよ」
カインの説得にレアはようやく顔を上げた。
 「ゼロはアベル様の望み。だったらわたしはゼロを大事にします」
ゼロに希望を託したアベルはこの事を喜ぶのだろうか。
カインはやっと掴んだ安息の日々を二度と手放さないと誓った。

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 2013年 5月17日 荘野りず

 アベレア前提ゼロレア。
 最初はアベルを泣かせるように書いていたんですが、違和感があったので変更。
レアはスペシャルエンドでもアベルの事を忘れないでいて欲しい。



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