悲恋系15のお題 レイジナ・アベレア中心で攻略

6、平行線(レイジナ)


「多少の犠牲はやむを得ない!人間だけ殺さないなんて器用な真似ができる奴だけじゃない!」
レイジが吠える。
 「人間は殺しちゃだめ!お願い殺さないで!」
ジーナローズが叫ぶ。
 二人の意見はいつまでも平行線だ。


 謁見の間で二人の叫び声が響く。
 「あの二人は今日もやってるのか」
 「いつまで経っても終わらないのね……」
 心配そうに見守るギルヴァイスとヴィディア。
 今日も言い争いは止まらない。
 「こんな調子じゃ士気に影響が出る」
ギルヴァイスが洩らす。
 「ジーナローズ様も割り切ってくれないかしら」
ヴィディアもため息をつく。
 天使と人間が組んで魔界に攻めてくるようになってからもうかなりの時間が経つ。
この二人もかなりの数の天使を斬った。
でも人間に手を出すことだけは厳しく禁止されている。
 「レイジももううんざりだろうな」
 「でしょうね」
 部下兼幼馴染の二人は現場を知っているだけにレイジの言いたいことはよくわかる。
ジーナローズの言い分は戦闘に参加していないから言える綺麗事だ。
 綺麗事だけでは戦いは終わらない。
 多少の犠牲を出してでも早く戦いを終わらせた方が結果的に犠牲が少なくて済む。
その事をジーナローズは解っていない。
 「とにかく、俺は魔界を守るために闘ってるんだ!」
この一言で今日の話し合いは終わった。


 「レイジ、お疲れ様」
ヴィディアがブランデーをレイジに渡す。
あまり酒は飲まない主義だったが、最近では寝る前に嗜んでいる。
 「……」
 「ジーナローズ様の言い分も解らなくもないわ。でもレイジはいつも苦労して殺さないようにしてるのに……」
 「……」
 「一度ジーナローズ様に前線の様子を見て頂いたらどうかしら?」
ヴィディアの声が耳障りだ。
 「一人にしてくれ」
 思ったより低い声が出た。
ヴィディアはびくりとした。
 「ごめんなさい。気が利かなくて」
ヴィディアは部屋を出た。
 「おやすみ、レイジ」
それだけ言うと去って行った。
それから一時間ほどして、今度は扉をノックする音がした。
 「誰だ?」
 「私よ」
それはジーナローズの声。
 「入ってくれ」
ジーナローズは部屋に入るとレイジと向かい合って座った。
 「さっきはごめんなさい。あなただって殺さないようにしているのに」
 「その事が解っているならせめて隊長クラスは殺す事を許可してほしいものだ」
 「……」 今度はジーナローズが黙った。
 彼女も本当は解っているのだ。
 「そもそも、なぜ天使はよくて人間は駄目なんだ?」
 「それは……」
 唇を噛んだ。
あの秘密を話してしまったらきっとレイジは怒るだろう。
 「人間は弱いわ。それだけじゃ駄目?」
 「納得できない」
こうしてこの夜も説得できなかった。


 二人が人間に討ち取られるとき、レイジは記憶を絶った。
レイジが復活し魔王城を取り戻し、ジーナローズを説得した時、レイジは変わっていた。
ジーナローズはそのことを喜んだが、それは長く続かなかった。
 人間と共に戦えた僅かな時間はジーナローズの中で宝物となった。
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 2013年 7月18日 莊野りず

……なんか悲恋じゃない気がします。
 話し合っても解りあえないところがギリギリ悲恋?
ジェネラルは書くのが楽しいです。



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